一人親方の責任はとても多くてリスク管理が重要ということ
もし自分の責任での事故ではなく下請けが事故を起こした場合の責任問題とは?
念願かなって起業独立をして、仕事も軌道に乗り始めて順風満帆のはずが、ある日、一つの事故により信用もなくなり、元請から仕事も打ち切られて、損害賠償も払えないで一気に倒産。
…とういうことは絶対に避けたいものです。
特に自信を持って起業独立される職人さんは事故とは関係なく自信満々なのかもしれません。実際現場で働いていたころの自分もそうでした。というよりは、事故なんて起こることは想像もしていませんでした。
しかし、起業独立後の一人親方は個人事業主としての経営者の仲間入りをしたと言えます。そうであればしっかりとしたリスク管理は必要ではないでしょうか。
一人親方が現場での工事中、作業中の対人や対物の事故があれば、損害賠償を自己の責任として負うことは当然のこととして、外注などの下請け(孫請け)が事故を起こした場合の責任はどうなるのでしょうか。
例えば、建設業許可を取得して仕事を請ければ受注額もそれなりに高額で、到底一人でその仕事をこなす事は難しく、従業員や外注などの下請けに協力をしてもらいます。
従業員の事故で損害が発生した場合であれば、使用者の責任として損害を会社が負うべきだとされています。あまりにも従業員の度が超えた事故であれば、逆に会社は従業員にその損害分を請求することもできます。
では、外注などの下請けの責任で損害賠償が発生した場合には、どうなるのでしょうか。
…かなり複雑です。
一人親方として仕事を請ける場合に従業員を抱えるほど稼いではいないが、一時的に人手が足りなく、困っているということはよくあることです。そのような場合には、横のつながりから知り合いの職人さんなどに協力してもらいます。言い換えれば外注、下請けに仕事を手伝ってもらうということです。
そのような場合に、外注である下請けが工事中、作業中に対人や対物の事故を起こしてしまい、損害賠償が発生した場合の外注を頼んだ一人親方の責任はどうなるのでしょうか。
現場内の対物事故であれば発注者に対して理由はさまざまありますが、一次的には元請が損害を賠償することとなるでしょう。そして請負契約先である一人親方や外注である下請けに、債務不履行による損害賠償を請求することになるでしょう。
では現場外の第三者に対人事故を起こした場合の責任はどうなるでしょう。これもまた、一時的には看板を背負っている元請が損害を賠償すると考えられますが、対物と同様に、やはり債務不履行による損害賠償を一人親方や外注である下請けに賠償を請求するといったことを考えられます。
もしもその損害を受けた第三者が直接その外注先に損害賠償を直接求めることがあれば、外注先が責任を負います。負いますが個人としては支払い能力が乏しい可能性もあるはずです。これでは第三者が不幸すぎます。
では誰が責任を負うのか、とても複雑で裁判案件であるため答えは難しいのですが、たとえ外注としての下請けといっても、実際の中身は従業員みたいな常勤のような扱いであれば、使用者の責任として、外注を頼んだ一人親方が責任を負うことも考えられます。
このように状況に応じての責任の所在を断定することは難しく、その事故の性質上によって結果や判決が変わりますが、いずれにせよ、なんなかの責任は問われる可能性は高いですので、一人親方である個人事業主も万一の際のためにリスク管理はしておく必要があります。
対人や対物の損害賠償に対応する工事保険とは!?
では、万一の場合のリスク管理としての工事保険とは一体どのようなものなのでしょうか?
はい、ひと言に工事保険と言いましても様々で、業務内容によっても違いがあり、それぞれの保険会社等によっても補償する内容には違いがあります。
複雑そうですね。
はい、しっかりと保険で補償する内容を確認して契約しないと、せっかく保険に加入したのに事故の際に保険対応外だったたり、嘘のような本当の話ですが全然必要のない保険に加入していて保険料を支払い続けていたケースもあります。
それではトラブルのもとですね。しっかりと確認して契約しませんといけません。
はい、おっしゃる通りです。工事保険の中でも特に重要と思われる保険には工事中に第三者やお客様に対して、物を壊してしまった、けがをさせてしまった場合の賠償責任保険である請負業者賠償責任保険と工事後に欠陥や汚損などがあった場合など請負業者がお客様に損害を与えてしまった場合の賠償責任保険である生産物賠償責任保険(PL保険)があります。
工事中の保険が請負業者賠償責任保険で、工事後の保険が生産物賠償責任保険(PL保険)で工事中と工事後でも同じ賠償責任保険でも別なのですね。
そうです。ですから保険契約の際には何を補償してくれるのか必ず用途に応じた確認での契約が必要です。例えば火災で建物が焼損したや建築資材が盗難にあったなど工事中に自社が不測の損害を受けた場合には、上の2つの保険では対応できません。別に建設工事保険の加入が必要となります。また、請負業者賠償責任保険に加入しても不注意でホコリによって汚損してお客様から損害賠償を求められたり、工事騒音で近隣から損害賠償を求められたりしても補償の対象外で、生産物賠償責任保険(PL保険)に加入していてもお客様の損害が自社の重過失、つまりミスが重大すぎる場合には、補償の対象外です。
保険契約はしっかりと契約内容を分ったうえで加入しなければいけませんね。
はい。とても工事保険は複雑なのでしっかりと確認しましょう。
保険契約にあたっての注意点は?
・補償してくれる金額はいくらなのかや自己負担額である免責金額(保険対応しても一定程度自腹を切る分)はいくらなのか
・割引などのセット加入の検討(例えば請負業者賠償責任保険と生産物賠償責任保険はセットで加入できる)
・補償外のトラブルを避けるために付加する特約についても確認が必要(工事遅延損害補償…工事遅延での損害の賠償補償する特約や管理財物損壊補償…自社が管理する他人の財物を損壊した場合等に賠償責任の補償が求められた場合に補償する特約など)
・保険期間の検討で適切な契約をして節約(工事の難易度が大小まちまちの場合には重要度に応じて個別契約であるスポットで契約する場合と年間を通しての工事が高難度で常に規模が大きい場合には年間包括契約)
万一の場合だけではない!賠償責任保険に加入すると起業独立直後でも信用性が得られる!!
賠償責任保険の加入は万一の場合だけの補償だけではなく、事業主として社会的な信用が得られるはずです。
仕事を注文する元請が、注文を受ける下請け業者の賠償責任保険の加入有無によっては、加入している下請け業者に依頼する方が加入をしていない下請け業者より圧倒的に優位であることは間違いないでしょう。
ですが、賠償責任保険の保険料が決して安いわけではありません。安易に無理な保険加入をして、資金繰りが悪化してしまっては元も子もありません。
しっかりと選ぶべき賠償責任保険であるか、ここは経営者としての重要な判断が求められますので慎重に。
当然に日常的に従業員や外注を扱うようになれば、いくら自分や自分以外の者が日頃から作業時の無事故注意を徹底していても、自分以外の者が引き起こす損害事故で、自分自身が全責任取らなければいけないといったことではとても納得がいかないではないでしょうか。ですから、従業員や外注を扱うような場合には、必ず加入する必要はあるでしょう。
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